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2014.12.13(土)更新
自然の価値を踏まえた自然資本経営の必要性について。3年前の9月、初めての議会質問の際からダムの問題を巡って県政に働きかけてきました。
なかなか表すことのできない、、自然がもつ価値。
小国川にアユ釣りに来る3万人の方々を試算すると年間22億円。ダムで環境が破壊されると年間10億円の損失になると、議会活動の初っぱなに取り組んで、近畿大有路先生からはじめて「自然資本の価値」について評価した値を算出していただき、提言してきました。
県は、その時の質疑やこれまで、「流水型ダムなら環境に影響をほとんど与えないから、それを評価するに値しない」などと無視を決め込んでいました。
今般、今年8月に国際的なアユの研究者であられる川那部浩哉先生らから提出された意見書で「流水型ダムでも環境に影響を与えるので、その損失を計算にいれるべき」とされたものを提示しました。
県はずっと「環境に影響をあたえないから大丈夫」だとしてきました。しかし今、それは根底から覆っているのです。
先般、エコロジカル経済学の先人であるハーマンデイリー氏の講演があり参加しました。世界銀行の上級エコノミストです。彼はまさに自然資本が人間の営む経済の根底にあるというピラミッドを示しています。
以前からデビッドブラウアーの「地球を失ったらどんな経済も成立しない」を引用してきましたが、ハーマンデイリーの定常経済の考え方の根底には自然資本がありました。
私たちの山形県は、農林水産業を基幹産業としているわけですから、まさに自然資本が根底にあります。
庄内でいえば、月山から成る水系で農業がはぐくまれています。食文化は、赤川扇状地の地下水の文化がそれを支え続けてきました。
内水面漁業でいえば、自然資本である川の生態系がその漁業の根底を支えている。だから、その根底を支えている生態系の力を失ったら、その上で何をしようとしても経済が営めないのです。
沼沢組合長がずっと唱えていた「川本来の力を失ったら漁業振興にならない」は、まさにそれを言い得ており、川那部先生もまさに理に適った考え方と評価されておられました。
今、県が進めようとしている「ダムを前提にダムをつくってもダムのない川以上の清流を求めて」という漁業振興策は、全くこの理に適いません。
それともう一つ。アベノミクスの国土強靱化、原発再稼働、とにかく市場経済優先の方向性は、まさにこの自然資本経営とは真逆に近い考え方です。
宇沢弘文先生は、社会的共通資本として、自然の価値を評価されておられました。
私は、山形県の経済、庄内の経済として、自然の生態系サービスの価値、景観の価値をしっかりと踏まえた自然資本経営を更に提言しけてまいります。
ちなみにデイリーの定常型経済を記した岩波ブックレットが発売されています。皆さんどうぞご一読を、後で画像アップします。
2014.12.05(金)更新
山形県議会 本日 代表質問があった。
住宅リフォーム補助金、3年間で12000人が利用。360億円の補助金が活用された。経済効果は556億円とか。リフォームの中身は省エネ化、バリアフリーが8割 今後は、空き屋対策や三世代同居対策などを検討したいとのこと。
住宅リフォームを促し、省エネ化をはかることについては、社会的な大儀があると考えている。前回の議会予算質問にて、家の燃費、エネルギーパス を紹介し、更に省エネが実質的に進み、高性能な住宅が増えるようにすること。それによって外に化石燃料代として外に出て行くお金を減らすことになり、そのリフォームを行うお金が地域に循環することになる。ということを示した。
長野県では、新規の建物について、エネルギーパスかキャスビーかQPEXか いずれかの方法の省エネのツールで性能を評価する建築物環境エネルギー性能評価制度をとりいれている。
山形県でももう一歩、省エネ性能をアップできる仕組みの構築をさらに促したいものだ。
2014.12.02(火)更新
12月2日から山形県議会 12月議会がはじまりました。
冒頭、11月に審議した平成25年度の決算に対する審議の報告、討論、認定の採否 がおこなわれました。
以下、3分の討論時間が認められた中での討論です。
平成25年度 山形県一般会計決算の一部、決算認定しかねる案件2点のみに対し、反対の立場で討論いたします。
まず、慶応大学先端生命科学研究所 支援事業であります。25年度まで県と鶴岡市あわせて拠出された金額は136億7500万円であります。
今般 第三期3年間の評価のための評価委員会が招集され今後の支援のあり方が協議されました。懸案である年間7億円の補助金額の内訳について、まるで固定費のような扱いのままの評価プロセスに大きな疑問を覚えます。
千葉県においては「かずさDNA研究所」への行政の補助金は序序に減額され自立的運営が促されております。人口減少や合併特例の算定替え時の財源不足を踏まえ、当研究所の今後の持続可能な発展のためにも、民間資金活用等、新しいスキームによる自立的な運営手法を構築する事を提言いたします。
次に、最上小国川ダム建設事業についてであります。25年度は漁協が反対している中でダム周辺工事が強行されております。
今年2月10日に、県と交渉にあたっていた沼沢前組合長が自死されました。昨年末の漁業権更新時に、漁業権を楯にとり、ダム計画の協議に着かせるという強引な県の手法は、違法性も指摘されており、行政の姿勢として断じて許されるものではありません。
▼平成24年9月に提訴されたダム建設差し止め住民訴訟の裁判審議の場やシンポジウムの場などでは
● 県が赤倉地内につくった堰により土砂堆積し河床が上昇し、それが昨今の水害の原因になっていること。
● 「流水型ダムは、建設時から、流域の環境に影響を与え、アユやサクラマスの生態を脅かす事
● 「県提出の資料で以前損害賠償問題になっていた河道改修と温泉への影響は直接関係がないことが解り、温泉に影響なく河道改修は十分に可能であること」などが科学者によって次々と立証され、ダムよりも河道改修のほうが真の治水を叶えるに有効であることが示されています。
こうした新たな知見に対し十分な説明責任を果たさないまま、ダムを前提とした漁業振興策を推し進める県の姿勢は、愚行そのものというしかありません。
以上、ダムに依らない治水事業への政策転換を強く求め、反対討論といたします。
2014.12.01(月)更新
明日12月2日から12月議会。そして今般は衆議院選挙と全くかぶっている。
それを踏まえて今朝は八文字屋前で訴えました。選挙戦中は私自身のマイクでは街頭に立てませんので。
今般の解散は、アベノミクス解散ということですけれど、アベノミクスは地方にどんな影響を与えているか。
結局のところ、大企業と中小企業、都会と地方、富裕層と低所得者層、輸出企業と内需ベース企業、製造業と非製造業という5面で格差が広がっている。これが実感なのではないか。これは田中秀正 元経済企画庁長官の言説。(週刊金曜日)その上での実質成長率 年率換算 マイナス1.6% 。これは大きい。と。現実は、格差拡大が助長されているだけで、都市の富裕層が美味しい思いをし、多くの庶民はほったらかし、非正規雇用は逆に増えて、生活に不安を覚える方が増えているということになるのでだろう。
これが実態のようだ。庄内でいえば、7割の農家が影響するといわれるコメの仮渡し金の減少 はえぬきで2500円減の影響は大きく、県内全体では140億円の影響。一家族あたり4町歩の田んぼでコメをつくっている農家で、米価仮渡し金の下落と直接支払い制度の減額で140万円ぐらいのマイナスになると県担当から聞いている。こうした経済が大きく響いている。
ニュースでは東京の高級デパートでの買い物行動でより高額な品が売れ、地方のショッピングセンターは軒並み消費が伸び悩んでいるとか。 結局こういうことなのだ。 今般の選挙は、集団的自衛権、原発再稼働の問題こそ重要だ。自民党政府は平気で原発をベースロード電源へと位置づけ再稼働を推し進めている。立憲主義を反故にした7月1日の集団的自衛権 行使容認の閣議決定の問題も大きい。 とにかく安倍政権の暴走に歯止めをかけることが今般の選挙の意味会いだと思う。
さて、今般の12月議会は、明日2日冒頭に25年度決算の討論からはじまる。そして12月11日には予算特別委員会での質問がある。1時間一本勝負。前回は23年6月議会での予算特別委員会での質疑だった。 今、諸々練って質問原稿を書いているところ。追って紹介していきたい。 なお、請願の締め切りは、明日いっぱい。メール、電話などでも受け付けていきたいのでよろしくお願いします。
2014.10.10(金)更新
請願78号 「河野談話を見直し新しい政府見解の表明を求める意見書の提出について」
現国会で安倍首相は「河野談話を継承」と表明しております。また「河野談話」は、「吉田証言」なるものをまったく根拠にしていないものであることは、この3日の国会の衆院予算委員会で菅官房長官が明らかにし安倍首相も同様の見解を示しました。
●河野談話には、「慰安所における生活は、強制的な状況の下での痛ましいものであった」とあります。自由のない生活を強いられ、強制的に兵士の性の相手をさせられた。つまり性奴隷状態とされたという人権侵害の事実は、多数の被害者の証言とともに、揺るがすことができない事実であると考えます。
私は、この事実こそ、『軍性奴隷制』として世界からきびしく批判されている、日本軍『慰安婦』制度の最大の問題であり、これこそ国際社会が問題にしている本質であると考えます。
河野談話を否定することは、「歴史を偽造し、日本軍『慰安婦』問題という重大な戦争犯罪をおかした勢力を免罪しようというものにほかならないと考えます。
私たちは、河野談話、村山談話などからなる私たちの歴史的責任を公式に認め、謝罪し受け入れるべきであります。そして、二度とそうした過ちを繰り返せぬように、平和憲法を政府に遵守させ、戦争しない国家づくり、平和外交、立憲民主主義国家の道、持続可能な社会への道を堂々と歩むべきであると考えます。
以上 採択に反対の討論とします。
請願67号 「特定秘密保護法の廃止を求める意見書」
●特定秘密保護法は、強行採決で成立時より指摘され続けている国民の「知る権利」を侵害する恐れは全く払拭されておらず、廃止を求めることに賛同するものです。
請願74号 「消費税10%の中止を求める意見書」
●今般の消費税率8%の税率引き上げによる景気下振れは「想定外」に大きかったと指摘するエコノミストの声があります。私は確実に県民生活に影響していると考えます。更なる影響を鑑みれば10%への増税は中止すべきであると考え請願に賛成するものです‘
請願79号 「集団的自衛権行使容認の閣議決定の撤回を求める意見書」
● 集団的自衛権行使容認の閣議決定は、「他国の戦争に加担すること」を時の内閣が決定したものですが、日本国憲法に違反する行為そのものであり民主主義の手続き違反、立憲主義を破壊する暴挙であるという認識にゆるぎなく、政府はただちに撤回すべきであると考え、願意妥当、賛同するものです。
2014.10.10(金)更新
9月8日の討論。9月補正予算のうち、ダムを前提とした流域振興策の策定について
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計上されている補正予算の中、最上小国川ダムによる治水を前提とした地域振興計画案の策定にのみ反対するものです。
ダムを前提とした清流未来振興図は、知事が掲げる自然と文明が調和する理想郷と、完全に矛盾しています。
上流にダムをつくって、全体的に老朽化した赤倉温泉街に人が来て活性化するのでしょうか。ダムをつくれば小国川全体の環境にダメージを与え、松原アユの味がそこなわれ、アユやサクラマスの産卵や天然遡上を妨げる恐れがあります。さらにダムの穴の閉塞の懸念があり、閉塞した際は温泉街を今以上に危険にさらすリスクがあります。「ダムのない川」のブランドが崩れ、釣り客は激減するでしょう。
「ダムをつくってダムのない川以上の清流を目指す」などとした「最上小国川清流未来振興図」は、最新の魚類生態学や河川工学から申し入れた反論を完全に無視した科学的にありえないものであります。
川本来の力を失ったらどんな漁業振興策もなりたちにくい事はいまや国際的に常識になっています。
それよりも、治水事業として赤倉温泉流域の河道改修とともに、秩序なく川に迫り出す旅館に手を入れ、温泉街自体の再生事業をおこなえば、安全安心を叶え老朽化でなやむ温泉街を救うことができます。まさに新しい価値をつくる公共事業となります。これは私たちが提案しているものです。
また、今般予算計上されている、アユ中間育成施設の井戸整備は、前組合長の時代から要望されていた、小国川漁協にとって死活問題といっていい喫緊の課題であります。
今般の漁協総代会前に漁協幹部は「ダムを容認しなかったら井戸の整備をしてもらえず、漁協がつぶれる」などと総代にダム容認を迫り「ダムやむなし」と判断した総代が多数いたようです。この予算について県がそうした条件を漁協に流布していた疑いがあり全く不当であると考えます。
本日協定締結とも伺っていますが、現在、川で生計を営み続けてきた組合員が漁業権の侵害を訴えています。それは更に総会開催を求めうる漁協組合員としての権利行使の可能性をつぶす行為であります。
なんの説明も同意もなく漁業を営む権利を剥奪することは許されない行為です。締結(ていけつ)の見直しを求め反対の討論とします。
2014.09.17(水)更新
議会報告「パドル」にも掲載した洪水被害や土砂災害対策。私が最も参考にしている実例は滋賀県の取り組みです。
ダムを6つ止めた滋賀県政。かだ知事は真の生命と財産を守る治水政策を掲げ、流域治水条例を制定。
水害リスクランキング、地先の安全度マップの公開、徹底した住民への対話を通じて、「危険なところに住まない」
危険を感じたら迅速に避難するを実践している。
嘉田前知事肝いりの流域政策室には二度訪ねており、二度目はほとんど三時間以上担当者のレクチャーを受け、その後も様々な意見交換をさせていただいている。
本日の朝6時20分ぐらいのNHKテレビで、滋賀県の取り組みが全国版で紹介された。住民に熱心にはたらきかける役所マンの姿が印象的だった。
そして以下、週間現代のWEBで、嘉田前滋賀県知事の告発として、広島土砂災害を例にとりながら流域治水の理念が説かれている。横田一さんの実にわかりやすいインタビュー記事だ。
今、私が取り組んでいる最上小国川の治水についてもこれと全く同様の事がいえる。今注目のダムは何のために造られるのか。赤倉温泉の治水のためだ。この赤倉温泉街にいくとすぐにわかるのが、川にせり出して建つ温泉旅館群だ。県知事はよく「歴史的な景観をとどめた赤倉温泉街」というが、歴史的にどんどん川に近く立地してそれも耐水化どころか、低い堤防の上にちょこんと乗ったような形になっている旅館があったりする。中心の阿部旅館が倒産して一年あまり。周辺の旅館も老朽化しているのがわかるし、そのご主人に伺うと、川にかけて旅館をコンパクトにするなどして旅館群を再生したほうが、次の世代のためになるのではないかと応えてくれた。
流域治水条例の思想でいえば、「危険なところに住まない」を原則に、少し川からセットバックして旅館を再生するほうが絶対に理にかなう治水事業だと思う。
前置きはこの辺にして現代の記事を読んでいただきたいと思います。
嘉田前滋賀県知事が告発 「広島土砂災害は自民政権の人災」
災害リスクは先進国の土地取引では重要事項
「日本人の命を守る」と豪語している安倍首相は、広島の土砂災害の際、のんきにゴルフに興じていて、叩かれた。しかし、この問題は危機意識や緊張感の問題とはちょっと違う。なぜ、日本ではかくも災害が多いのか。それは自民党政権による“人災”だという。前滋賀県知事が語る衝撃の“真相”――。
――広島土砂災害では73人の犠牲者が出ました。安倍首相は集団的自衛権や原発売り込みには熱心なのに、この時(8月20日)はゴルフをしていました。
安倍首相を含めて政権与党が「日本人の命、命」と言うのなら、まず、土砂災害や水害、そして「環境破壊災害」と位置づけられる原発事故から国民の命と財産を守るべきではないでしょうか。何度も安倍首相は「母親と子供が避難する米軍護送船を守り切れないので集団的自衛権が必要だ」とパネルを使って訴えていましたが、いま目の前の災害から国民を守れないことの方が切実です。
災害リスクは先進国の土地取引では重要事項
――安倍首相は自分に都合がいい時にだけ「国民の命」を口にするんじゃないですか?
広島土砂災害は、まさに歴代の政権が戦後一貫して続けてきた「土地持ち階層優遇政策」が招いた人災の側面があると思います。戦後の政権与党の政治と行政の責任といえます。
――どういうことでしょうか?
日本では、政府が国民に自然災害を受けるリスクを十分知らせず、危険な場所に住宅や福祉施設を拡大してきたのです。私は環境社会学者として滋賀県内や近畿圏の過去の水害被災地を調査しました。その結果、水害は社会現象の側面が強いということがよくわかりました。旧住民が経験で知っている水害リスクなどを新住民に知らせることなく、土地を売却して新しい宅地開発などをしているのです。海外の先進国との決定的な違いにも愕然とし、それが2006年、知事選に立候補した動機でもあるのです。
災害リスクは先進国の土地取引では重要事項
――海外は違うのですか?
先進国では災害危険区域を地図に示した「ハザードマップ」が当たり前になっていました。アメリカではハザードマップを参考にして水害保険が運用されていますし、フランスでは「それぞれの土地で過去100年間、どういう水害があったのか」ということを反映したハザードマップが作成され、不動産取引における重要事項説明になっています。ところが、日本はハザードマップを持っていない。大きな河川のハザードマップは平成10年代にようやくでき始めました。しかし、一部の大河川だけで、小河川や農業用水や下水道などがあふれるリスク、あるいは土地が低い場合のリスクをも織り込んだ統合的リスクマップはなかった。滋賀県では流域治水条例を成立させ、「地先の安全度マップ」を作りましたが、これが全国で初めてでした。
――2期8年の嘉田県政の総決算ですね。
災害リスクは先進国の土地取引では重要事項
当初、流域治水条例に多くの自民党県議が反対していました。実はハザードマップは、地価が下がるので土地所有者には不都合なのです。大量の土地を持っている人たちは、どちらかというと古くから住んでいる地主側です。この人たちは水害リスクの高いところは経験的に知っている。知っていて宅地開発業者などに売る。最近は福祉施設などが、リスクが高い地域にできる傾向にあり、大きな問題をはらんでいます。水害のリスクがあるのに知らされずに土地を買わされるというのは、不良品をつかまされるようなものです。行政としても責任を持って安全管理をしないといけない。それで、フランスでは当たり前の「土地取引でのリスクマップの提示」を流域治水条例に盛り込みました。土地取引時には「地先の安全度マップ」を提示する。これを宅地建物業者に努力義務化したのです。9月1日から施行しています。
「地下が下がる」と反対した市長たち
――地主の代弁者が自民党という構図ですか?
政治的にはそのような傾向にあります。そもそもサラリーマン、被雇用者層は、議員になれない、なりにくいのが今の日本の政治体制です。土地持ちの古い保守層は自営業などが多く、政権与党の代弁者という傾向が強いですね。水が氾濫しやすい、水害を受けやすい場には新住民が住む傾向があり、その土地の成り立ちを知らず、水害に遭う。そんな例が日本各地にありました。私は土地を持てるものと持たざるものの間の社会的不正義が許せなかった。それがいまだに構造的に続いている。この不公平が世代を超えて継承される恐れがある。社会的正義感からして許されないことです。
――しかし、条例には反対が多かったのでしょう?
「地先の安全度マップ」を公表しようとした時に「地価が下がる。人心を混乱に陥れるのはいかがなものか!」と徹底反対した市長さんたちが、滋賀県内にも何人かおられました。土地を持っている地主側の人が多かったですね。それぞれに利害をもって判断をされたようで、悲しいことです。
「地下が下がる」と反対した市長たち
――それでも滋賀県はマップができましたが、日本全国を見回せば、マップがない地域ばかりです。
ハザードマップが十分に活用されていない日本の実情はあまりにひどい。これは地主や不動産開発業者ら利害集団に対する迎合政策としか言いようがありません。歴代の政権与党は危険地域に人が住むのを野放しにする一方、リスクが高まった水害対策としてダム建設などハード整備を訴えてきました。確かにある一定規模の水害まではダムは防げますけれども、巨額の税金をつぎ込む必要があり、効果が出るまでに何十年も時間がかかり、自然破壊や集落移転の弊害が伴う。先進国では常識のハザードマップを使って「ここは危ないところですよ」と住民に知らせ、また行政としても土地利用規制や建物規制をした方がはるかに有効なのに、ハザードマップの活用を十分に進めてこなかった。歴代の政権与党は、支持者である地主と業界団体のために人命軽視で非効率な防災政策を続けてきたとさえいえます。そもそも今、人口減少社会になってしまったわけですから、「危ないところには家を造らない。造るのだったら、かさ上げをするとか災害対策をして造る」という合理的な土地利用にすることが重要なのです。
「地下が下がる」と反対した市長たち
――災害危険区域に家が立ってしまっている場合でも、正直に「ここは危険ですよ」と伝えればいい。それをやっていないのが歴代政権であり、となると、「人災」といえる?
政府が15年前に土砂災害防止法を作った時にも同じような議論があった。「警戒区域に指定されたら、地価が下がる」と。土地を利用目線ではなく、販売、商売目線で見る人にとっては、リスク開示は不都合なのです。私は過去30年以上、河川政策と環境社会学を学んで、徹底的に原因調査を行い、何冊も本も書いてきました。欧州やアメリカの河川政策も現地訪問し研究しました。その結果、ダム以外の方法による治水のほうが合理的な場合が多いことがわかってきました。滋賀県が施行した流域治水政策は世界標準では当然です。政治のリーダーは災害リスクを科学的に正しく知って、正しく伝え、正しく備える仕組みを国民運動とすることに旗を振ってほしい。国民、住民も住んでいる場所の自然災害リスクを、自ら知って備える覚悟を持っていただきたいですね。(聞き手・横田一)
▽かだ・ゆきこ 1950年5月18日生まれ、京大大学院、米ウィスコンシン大大学院修了。農学博士。滋賀県立琵琶湖博物館総括学芸員、京都精華大学人文学部教授を歴任し、2006年7月2日の滋賀県知事選に当選。10年再選。12年の衆院選では「日本未来の党」をつくったが、翌年代表を辞任。びわこ成蹊スポーツ大学長就任予定。
2014.09.16(火)更新
http://www.patagonia.com/jp/patagonia.go?assetid=78639
親愛なるデビッド・ブラウワー様 そして川を愛する皆様へ
by 草島 進一
『Alpine 2012』カタログ掲載
1992年、リオで環境サミットがおこなわれたその年、私はカヌーの上にいました。そして大勢の仲間とともに300艇のカヌーで、完成間近の長良川河口堰に向かって「河口堰建設反対」 を叫んでいました。 貴方は長良川現地にいらして、全国から集まった1000人以上のアクティビストたちの先頭で行進していましたね。私は当時あの運動をきっかけに出会った仲間たちと、空と水の境目がわからなくなるような日本の数少ない清流でカヌーを漕ぐのが至福の時でした。
あれから20年。当時の長良川の運動は、堰は止められなかったものの、リーダー天野礼子氏の呼びかけと強烈なロビー活動により、日本の政治、官僚、建設業界、御用学者、報道機関が癒着した病気の構造が白日の下にさらされ、その結果いくつかのダムが止まり、河川法が変わって、環境と住民参加の重要な2項目が法律に加わりました。これで、2600基もの巨大ダムを作りつづけてきた土建国家は猛省し、変わるのかと思っていました。でも、実態はほとんど変わりませんでした。住民参加や環境も名ばかりで、ダムありきの委員会が跋扈し、ダム建設は進行していきました。
もちろん、志ある民は行動をつづけました。2010年に亡くなった姫野雅義氏は、2000年1月に吉野川可動堰の建設の是非をめぐる住民投票を実現。投票で住民が「NO」を突きつけ、事業を止めました。また同じ年、木頭村の藤田恵村長は細河内ダムの建設計画を、村を挙げてほぼ白紙撤回させました。2001年2月、田中康夫長野県知事(現衆議院議員)は、「脱ダム宣言」をおこないました。「数百億円を投じて建設されるコンクリートのダムは、看過し得ぬ負荷を地球環境へと与えてしまう・・・河川改修費用がダム建設より多額になろうとも、100年、200年先の我々の子孫に残す資産としての河川/湖沼の価値を重視したい・・・出来得るかぎり、コンクリートのダムを造るべきではない」という宣言と実際に4つのダムを止めた行動に、私たちは奮い立ちました。
40年間住民運動がつづいた川辺川。推進反対論者が徹底的に公開の場で議論する住民討論会で潮谷義子元知事が問題を明らかにし、2008年9月11日に蒲島熊本県知事が「いま、この時代に守られるべき生命と財産を踏まえたとき、球磨川の清流こそ、我々が守るべき宝」と表明して川辺川ダムを止めました。そして2009年9月、「コンクリートから人へ」を掲げた民主党への政権交代。当時の国土交通大臣の前原誠司氏は、「八つ場ダムと川辺川ダムの中止。そして全国のダムを一端凍結して再検証をおこなう」と画期的な表明をし、建設予定の83のダム建設に抵抗する私たちは万歳して涙を流しました。
けれどもそれから1年、私たちのあいだには失望が広がっています。ダムに依らない治水論の学者は検証委には入れず、ダム御用学者で構成される完全非公開の国のダム評価委員会は、次々と建設推進に「GO」を出し、反対する多くの住民やNGOの思いは完全に反故にされたのです。皮肉なことに、ダム検証がダム推進にお墨付きを与えています。全国に絶望が広がるなか、「もったいない」を掲げて2006年に当選した滋賀県の嘉田由紀子知事は3つのダムを止め、ダムに頼らない総合治水へと舵をきりました。基本高水論では埒が明かないと、どんな洪水でも非定量型治水流域政策局をつくり、大阪府、京都府、兵庫県など関西連合を導いています。
さて私はといえば、貴方の志を胸に、いま東北の山形の地で県議会議員として地元の月山ダム問題、最上小国川の問題に取り組んでいます。月山ダム建設の利水事業は止められませんでした。2001年のダム竣工により国内有数の地下水を保有する鶴岡市の水道水はダムの水に切り替わり、水道料金は2倍。住民は水質低下と不安定な水温に悩まされています。そしていま最上川の支流随一の清流、最上小国川には「治水専用穴あきダム(Dry Dam)」が計画され、反対運動を展開中です。現在では日本は人口減少社会に転じ、水が余って、貯水型ダムには歯止めがかかっています。国は貯水ダムの環境破壊はようやく認めたようですが、治水専用のいわゆる穴あきダムは環境に優しいと称して、普及させています。
本当にダムによる治水は可能なのか。2004年の新潟水害では、上流にダムのある五十嵐川で死者をともなう水害を引き起こしました。2011年和歌山では3つのダムが洪水で満杯になり、結局放水によって水害を大きくし、犠牲を出しました。原子力発電の安全神話が2011年3月11日に発生した東日本大震災による福島第一原子力発電所事故で崩壊したのと同じように、じつはダム安全神話は崩れているのです。また東日本大震災の津波災害ではいくつかの場所で、津波が数千億円で作った潮止め堤防を乗り越え、大勢の方々が命を失いました。それは基本高水水量を想定してつくるダムも同じです。想定以上の洪水がくると、人命を奪う凶器にさえなる。私たちは教訓とすべきです。元京大防災研究所長の今本博健氏は、「穴あきダムはダムの延命策としか思えない歴史的愚行」と評しています。
貴方が「地球を失ったらどんな経済も成立しない」と伝えていた環境の経済価値。私はその自然資本(Natural Capital)を論点にしようと、鮎釣りに3万人訪れる小国川の価値を年22億円の経済効果、そしてそれがダムで失われれば年10億の損失と試算し、県議会で議論中です。今年の「リオ+20サミット」の中心テーマになっているグリーンエコノミーの内の「生物多様性の経済価値(TEEB)」は、2010年の生物多様性サミットでも目標が定められましたが、実効力は乏しいままです。米国では、流域の地域経済のためには漁業を復活させたり、レジャーに使ったりしたほうがいいと1994年にダム建設を止め、いまや700ものダムを撤去したと聞いています。でも日本では、いまだ土建会社が儲かれば地域経済は潤うとする古い政治屋たちが跋扈しているのです。
でももう市民は気づいています。ポスト311の希望の社会づくりには、原発もダムもいりません。古い利権ムラを脱して、社会のビジネスモデルを変えるときなのです。私たちが行動するとき、貴方のスピリットがいつも胸にあります。いま行動のとき。子どもたちとともに川に遊び、本来の美しさに触れ、それを未来に手渡すアクションをするときです。
2014.09.16(火)更新
山形県議会の9月補正。小国川漁協のアユの中間育成施設の井戸整備等、改修事業費1100万円が計上されている。この井戸整備は故沼沢組合長時代からの懸案で昨年度から強い要望があったものだ。そもそも中間育成施設、井戸整備は、町、県、国とも水産振興のために単独でおこなわなければならないもの。
それを今般、漁協組合員がダムを容認することを前提に、とかと条件がついていると担当者は説明した。新聞記者が尋ねると、もし、漁協と県の覚え書きが決裂した場合、要はダム容認とならなかった場合、井戸整備は予算がついていても着工しないのだと名言したそうだ。
そもそも漁業振興策とダム事業は別々の事業だ。それを無理矢理一緒にして、「ダム容認なら井戸整備する。容認しないなら井戸整備しない」などとダム反対派の組合員を切り崩すやり方のようだ。あまりにあからさますぎるやり方だが、憲法で擁護されるべき「財産権」たる漁業権をもつ漁協に対して、不当な圧力をかけて、その権利を無きものにするようなやり方に思えてならない。こんなことをやられると組合員は正確な判断ができなくなるのではないか。
漁業振興策とダム事業はそもそも、別々の事業。ダム建設については治水事業の一方策だが、現在裁判論争中で、公益かどうかは疑わしい。僕らは河道改修事業のほうがよほど未来に価値をつくり生命と財産を真に守る公益事業であると思うのだ。漁業振興策とダム事業は切り離して行わなければならない。
無理矢理抱き合わせて漁協組合員に不当な圧力をかけることは絶対に許されない。県は猛省の上、9月補正のこの案件の暗黙の「条件」を取り去るべきだ。
2014.08.30(土)更新
最上小国川ダム問題。改めて読売新聞山形版の記事。
山形県が漁業補償案を提示。110万円!?
小国川漁協組合員は約1100人。一人あたり1000円!?
組合員の皆さん。これまで先祖代々、永々と受け継がれてきた豊かな清流でのアユ漁の環境を1000円で売るんですか?あまりにもバカバカしい話です。「川の力を失ったら漁業振興にならない」とダム反対を貫いてきた元沼沢組合長の志を思い出してください。
科学的に、赤倉温泉流域に県がつくった堰を取払い、土砂を取り除く等、河道改修による事業こそ、治水を内水被害、外水被害ともにかなえ、流域環境を守り、更に老朽化した赤倉温泉を再生する最後ともいえる絶好のチャンスなのです。
ダムをつくったら、全国の事例の中では穴が小さい穴あきダムの穴の閉塞の懸念があります。穴が詰まったらダムが機能しないことになります。これは県の新しいプランでも以下、懸念は残ったままです。
京都大学名誉教授 今本博健 先生より。
最上小国川ダムの常用洪水吐は1.7B×1.6Hと小さく、穴づまりの可能性が大きい。そのことを認識して多重的な対策案を実施するとしたのであろうが、その効果には疑問が多い。
①の砂防堰堤の活用については、すべての流木を完全に捕捉することが不可能なうえ、砂防堰堤の設計では上部に流木捕捉工を設置することを想定しておらず、流木を捕捉することにより砂防堰堤自体が破壊される恐れがある。
②の鋼製流木止めの設置については、流木止めより下流で発生する流木はそのままであり、上流からくる流木を完全に捕捉することは不可能である。
③の仮締切堤の活用については、巨礫の捕捉工としての効果は期待できても、浮遊して流下する流木の捕捉は期待できない。
④の鋼製スクリーンの設置については、他の穴あきダムでも採用されているが、スクリーンの前面に巨礫が堆積すれば穴が詰まったと同じ状態になる。スクリーンを設置することにより、それがなければ流下する土石まで捕捉されることになり、穴づまりの可能性を大きくしかねない。
⑤の可動式穴づまり防止装置(維持管理板)の設置については、自然放流の穴あきダムに流量調節ゲートをつけたことになり、どのように操作するかが問題になる。穴が閉塞した場合、ゲートを上げることで堆積物が流下するとは限らない。
以上のように、ここに示された対策はいわば「思いつき」程度のもので、穴づまりの懸念を解消するものではない。
また環境の影響については川那部浩也先生はじめ4名の研究者によって、これまで「環境にやさしい」としてきた県の見解だが、その見解を導きだしたました。
最上小国川流域環境協議会資料の問題点
1)調査の目的や方法が吟味されていない
2)限定的な調査データから逸脱した結論が導かれている。
3)各調査に結びつきがない
4)アユそのものに関する調査や検討が全く存在しない。
が指摘されています。
これに対して県は無視したままで 何の反論もないままです。
更に老朽化して、今でも護岸の脆弱性が地元の旅館からも指摘されている赤倉温泉。
この地域の実態を述べます。
赤倉温泉流域は、県がつくった堰によって土砂堆積しています。
その堰を取り払って土砂を取り除けばダムで止めると同様の水が流せるようになるのです。
「温泉湯脈に影響するから河床を触れる工事はできない」と県は主張してきましたが温泉開発の専門家は、温泉に影響を与えないように工事をすることはいかようにも可能。メカニズムを解明しながら影響を回避しつつ工事を行う事は常套手段であり、県は調査といっているが、十分にメカニズムを解明することなく、表面的に「影響ある」というところだけで止めてしまっていたのではないか。これは実際に県の調査に携わった温泉開発、研究者、川辺孝幸先生が指摘していることです。
それに、中心の旅館(阿部旅館)は倒産し、1年間営業停止しカビがはえてきたような状態。周辺の旅館は老朽化している状況であり、河道改修を通じて、温泉旅館群のダウンサイジング、リノベーションをはかり、温泉街そのものを再生させる。それをやるには、最後の絶好の機会といえる。と、都市計画の専門家、国土交通省の元幹部からも指摘されています。
ダムよりも赤倉温泉の河道改修こそ、治水をかなえ、清流を守り、そして赤倉温泉を改修・再生する最後の絶好のチャンスなのです。
みなさん舟形、最上町のお知り合いにその真実を伝えてください。