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嶋津さんの指摘。河川行政の民主主義


朝日新聞に以下の意見が掲載された。最上川水系流域委員会にも共通した、「非民主主義的な流域委員会」を指摘したものであるので参考まで転載する。
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私の視点「河川行政 住民参加の機運止めるな」

嶋津 暉之 (水源開発問題全国連絡会共同代表)

河川行政の民主化をめぐる国交省の姿勢が後退している。官僚主導を弱め、流域の自治を重視する先進例として注目を集めてきた「淀川水系流域委員会」を、委員の任期が切れる来年1月に「休止」させる方針を表明したが、私たちはその影響の大きさを危惧せざるを得ない。

民主化の動きは、利水計画が破綻したにもかかわらず、運用が強行された長良川河口堰の反省が契機となった。官僚主導の河川行政への厳しい批判を受けて97年に河川法が改正され、住民意見の反映が盛り込まれた。その後、河川整備計画を立てる際、審議に住民を加える手法が広がり、昨年秋の時点で、委員を公募した1級河川の流域委員会は全国で15に増えた。

そのモデルケースが、淀川水系の河川整備計画のあり方を議論してきた淀川水系流域委員会である。同委は国の計画案の追認ではなく、一から議論を積み上げ、発足から2年後の03年、五つのダム計画すべての中止を提言した。

提言に説得力があるのは、運営方法が民主的だったからだ。必ずしも公共事業に好意的とはいえない人を含めた第三者の有識者でつくった準備会議で委員を選び、一般公募の委員枠も設けた。事務局は役所に置かず民間機関に委託し、審議内容と資料は全面公開された。傍聴席からの発言も認められ、市民団体のメンバーが「利水上、ダムは必要ない」との主張をデータに基づいて説明したことが審議に影響を与えたとされる。

今回の突然の休止方針は、「『脱ダム』がほかの河川に波及することを恐れた、先進モデルつぶし」と考えざるを得ない。

住民参加の道を閉ざす国交省の姿勢がより強固になったケースも目立つ。

三つのダムや遊水池の大規模掘削などが計画されている利根川水系の河川整備計画づくりをめぐって、私たち市民団体は、流域の生態系や自然再生などに詳しい住民の意見を反映させるべきだとして、「淀川方式」をモデルにした流域委員会を設置するよう要望してきた。しかし、国交省からは「検討中」という返事しかなく、先月下旬に公表された委員の構成は、河川工学などの専門家と地元のマスコミ関係者だけが選ばれ、名称も「有識者会議」となった。

住民の意見を聴く方法として、国交省は「公聴会を開催する」としているが、公聴会は意見を述べるにとどまり、国交省案を変えていくのに必要な科学的議論はできない。住民が議論に直接参加できるよう保障することは、改正河川法の生命線ではないか。

今月4日の初会合では、委員からも「改正河川法の趣旨にそぐわない」などと批判が相次いだ。18日の第2回会合では、公聴会の回数を増やす方針が示されたが、議論を封じる公聴会方式のままでは基本的に何も変わっていない。

国交省の姿勢が後退している背景には、長良川河口堰で苦い経験をし、その後中枢を担った官僚が次々と退職していることも影響しているようだ。住民と一緒に河川行政を進めていく機運を、ストップさせてはいけない。河川法が改正された原点に立ち返り、「淀川方式」を広めていく方向に舵を戻すべきである。

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以前にも指摘したとおり、淀川流域委員会の委員長の今本先生は、最上小国川ダムの件で、土木部長と折衝した先生である。
「たった6回の小委員会、本委員会も2回のみ。議事録をみてわかったが、小委員会も治水論について議論したのはたったの2回だけ。そんな最上川水系流域委員会は形骸化した委員会そのもの」と先生は言及された。

5年間500回もの議論を積み重ねていた淀川流域委員会の真摯な姿勢。これは長良川を教訓に生まれたこの国の新しい宝だと思う。治水論をめぐるこうした議論の積み重ねに比べれば、山形県や知事判断の不真面目さが浮き彫りになってくる。

今本先生は「これだけのすばらしい川をめぐる議論として、本当に情けない」ともおっしゃってらっしゃった。私たちは、知事に、こうした流域委員会の常識を伝えるために知事面談を申し入れていたのだけれど、「会う気すらない」ような姿勢を見せ、国土交通省のデータだけの情報で判断したことに僕は怒り心頭なのである。