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27日、公開質問状を提出。




11月27日、県知事宛、これまで、全国の釣り人。川を愛する市民。また小国川流域で集めた方々による署名2137名の署名とともに、以下の公開質問状を山形県知事に提出しました。

昨日、これまで集めた2173名の署名(第一次集計)とともに、以下 の公開質問状を提出しました。



           平成18年11月27日月曜日

       ダムに依らない“真の治水”の要望と公開質問状
                                             
山形県知事   斉藤 弘 殿
山形県土木部長 池田 隆 殿                 

                   最上小国川の“真の治水”を考える会
                           代表   押切喜作
                           事務局長 草島進一

 先般11月24日、これまでの検討経緯について県側から説明がありました。その後、質疑応答がありましたが、経過の説明を聞いていて、私たちは、これまでの治水策、環境面での議論がいかに不十分だったか、又説明不足だったかを再認識する結果になりました。また、当日もたった一時間足らずで質疑打ち切りとなり、これまで開かれた公聴会と同様、議論が尽くされたといえるものではないと確信いたしました。

 委員会の構成について、土木部長は「『純粋客観的に審議した』と委員の方が言っていた」と主張されましたが、委員会構成の内、「専門家」として河川工学者がダム推進・容認論のみ主張されていた風間氏 一人のみであった。ということであれば、他のメンバーが「客観的に話している」といっても河川の技術的な議論は、その「専門家」の方の意見に従う結果になることは当然であります。治水対策について、真の議論は、ダムによる治水論者と、ダムによらない治水論者がいてはじめて成立します。そのこと一つとっても、これまでの流域小委員会の議論は極めて不当であります。

 県の説明は一応は3案を示したようになっていましたが、ダム案については問題点が指摘されず、メリットだけが強調されています。

 つまり、県のこれまでの説明は、穴あきダムのメリットを強調し、他の案についてはどちらかというとデメリットを強調し、ダム案に誘導してきたことを強く感じるものでありますし、こうした、穴あきダムのデメリットの部分を慎重に考慮にいれご判断いただきたいと、希望するものであり、又、改めて、“真の治水”のあり方について再検討をすべく、真の治水代替案(基本方針)の作成に加わった専門家との再協議を更に求めるものです。

今本博健 京都大学名誉教授 河川工学 元京大防災研究所所長 は、最上小国川ダムの問題点を次のように指摘しています。


 最上小国川ダムは旧来型の治水方式であり、真の治水の「3要件」を満たしていない。

�治水機能が限定的である。
 1)計画規模を超える洪水に対しては治水機能を発揮せず、下流での急激な水位上昇により、逃げ遅れなどで被害を大きくする恐れがある。
 2)ダムの集水面積は37.5km2に過ぎず、治水上の効果が現れるのは直下流の赤倉温泉などのごく限られた地域のみである。
 3)「穴あきダム」は、計画規模以下の中小洪水には調節効果がなく、効果を発揮するのは文字通りの数十年に1度だけである。
 4)放流口が1門しかなく、それが巨石や流木などにより閉塞されると、重大な支障となる。放流口の数を増やせば大きさを縮小せねばならず、閉塞の恐れがさらに大きくなる。

�河川環境に重大な影響をもたらす恐れがある。
 1)穴あきダムでも、短期間であるにせよ、洪水の濁水を貯留する。このことにより湛水域の樹木は枯死し、生物は死滅する恐れがある。
 2)ダム建設予定地点上流に2基の砂防ダムが設置されているが、このことは上流からの土砂の供給が多いことを意味している。こうした土砂のうち粒径の大きな砂礫は洪水の減衰時に排出されない恐れがある。
 3)湛水域に貯まった細かな土砂は洪水後にも排出され続けるため、濁水状態が長期化する恐れがある。
4)河川環境や土砂移動についての説明は定性的であり、定量的な検討が不足している。

�日常にも役立つ治水という視点が欠けている。
 1)赤倉温泉の一部の建物は川にせりだしており、清流を活かしていない。
 2)川の両岸に増水時には水没する程度の高さの歩道を新設し、清流に親しめるようにするとともに、河道の流下能力の増大をはかるといった検討がなされていない。
                                以上。


なお、私たちは、現在推し進められようとしている穴あきダム案に対して以下なる疑問があり、回答を求めるものです。



1)穴あきダムの環境への影響について
 「日本屈指の清流最上小国川を環境影響の実験台にするのですか?」


最上小国川は、「松原鮎」の里として有名なアユが数百万匹天然溯上する清流です。最新の穴あきダムである益田川ダムのある島根県益田川は、隣接する清流高津川と異なり、昭和のはじめに紡績工場の誘致に伴う廃液を流す段階で漁業権を県が買い上げている川でした。又、最新の益田川ダムでも環境アセスはおこなっておらず、事前事後で魚類の個体数の定量的な実測などがおこなわれておりません。

先日、最上町でのダム推進の説明会で講演し、▽水質や環境、景観などに変化はほとんどない。▽貯水池が常に空であり、管理が容易▽スイスなど、海外で有効に機能している。などを挙げ、「穴あきダムは21世紀のダムとして提案できる」とした角 哲也氏に対し、今本博健 京都大学名誉教授(河川工学 元京大防災研究所 淀川水系流域委員会 委員長)は、「環境にほとんど影響がない」という科学的根拠を示せと11月14日に質問状を送っておられますが、しかし、未だ回答はありません。

 先般の説明会でも、県が主張している「穴あきダムは環境に影響がほとんどない」について、科学的根拠を質問いたしましたが、具体的な根拠を示した回答は全くありませんでした。
 
漁業権があり、小国川ほどの魚類数、生態系に匹敵する清流環境のある河川での運用実績、環境モニタリング、魚類数の変化などの実績を示してください。
また、「環境に影響がない」科学的根拠を示してください。



2) ダムのコンク リートには寿命があります。例えば熊本、球磨川の荒瀬ダムは完成後50年で撤去が決定しました。ダムの寿命がきて、撤去することになると大変に巨額な費用がかかります。つまり、ダムでは永続的な治水を叶える事はできないのではないですか。穴あきダムは、ある一定程度は土砂がたまることを防ぐことは可能かもしれませんが、このコンクリート本体の寿命という問題はつきまといます。 米国ではすでに老朽化した600ものダムを撤去する時代にはいっていますが、この撤去コストははかりしれません。結局、次の世代に莫大なツケを背負わせることになります。ダムの寿命をむかえたら、巨大産業廃棄物の行方と、流域の治水はどのようにしておこなうのでしょうか。

3) 建設コストについて、ダム案が他の案よりも30億円低く見積もられていますが、例えば月山ダムの場合、780億円の計画が1780億円になりました。結果的に130億なのか甚だ疑問です。最上小国川ダムとほぼ同規模の益田川ダムは総事業費300億円です。また、他の穴あきダム計画地のダムデザイン検討委員会では、ダム上流で水位変動が激しく斜面崩壊を起こしやすいため、上流部ののり面や斜面保護工事、地滑り対策工事が続けられる可能性があり、莫大な費用がかかるのではないかと指摘されています。130億円の中にこうしたコストははいっているのでしょうか。また、それぞれの案の積算根拠を示してください。
 


最後に、今年8月13日の朝日新聞一面には「あふれる治水」という表題で、来年度に国交省は、公共事業費減を背景に、堤防整備が遅れている河川の流域で伝統的治水施策の「二線堤」や「輪中提」を整備する新たな治水策を検討し、制度の創設を予定しているとの記事があります。要するにダムだけではない、治水策が紹介されております。(別紙)
 また、この国の動きを受けて、筑後川流域でも、そうした治水策を採用しようと研究がおこなわれはじめているとの報告もあります(別紙)。


「一定規模以下の洪水では水害を発生させない」というこれまでの方式を

「いかなる大洪水でも少なくとも壊滅的な被害を回避するようにする」
「自然環境に対して重大な影響を与えないようにする」
「治水に役立つだけでなく、まちづくりにも役立つようにする」

これを今本博健先生は、「真の治水の三要件」と呼んでいます。

こうした“真の治水” 策がまさに21世紀型の治水策であり、今後普及が進むだろうことをこの2つの報告は示唆しているのではないでしょうか。

 私たちは、このような新しい制度も考慮にいれ、また、新潟水害の後、五十嵐川で400軒もの家屋移転を伴いつつも河道改修をおこなっている事なども考慮にいれ、赤倉温泉地域の河道拡幅案による治水策についてもっともっと検討すべきであり、まだまだ検討の余地があると考えております。

ダムによって栄えた町はありません。
日本の遺産ともいうべき、日本屈指の清流環境と天然アユ「松原鮎」をいかし、持続可能な、赤倉温泉地域の真の活性化と、真の治水を叶えるために、ぜひ、賢明なる知事のご判断をいただきますよう、よろしくお願い申しあげます。                                                     
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