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人口減少、地方消滅回避策、最も重要視すべきは、地域ならではの価値を失わないこと。


 今般の質問を振り返り、特にお伝えしたいこと。

人口減少、地方消滅が叫ばれる中、地方創世という時、私が最も大切にすべきは、地域ならではの価値や魅力を絶対に失っては成らないということであるということです。特に自然の環境や景観は、人の手ではつくれないし、一度破壊したら元に戻りません。

このポリシーに基づいて、私は小国川ダム問題に取り組んできました。

縄文の女神の時代からほぼ変わらない、ハコネサンショウウオがいる小国川上流部のブナ原生林から日本海までのダムのない100キロの森里海の連環をとどめる天然河川は、まさに生物多様性のいのちのゆりかごであります。

これこそ山形県の自然遺産であり次世代に手渡さなければならない宝ではないかということです。

 今般の質疑では、県がずっと無視排除し続けてきた、アユ研究55年の研究者 川那部浩哉 京都大学名誉教授をはじめ先生方の最新の知見を紹介しつつ、結局、県の進める流水型ダムは小国川の屈指の清流にアユやサクラマスの生息環境や品質に悪影響を与えるといことをご紹介もうしあげました。

 年間3万人の釣り人が全国から集う、ダムのない小国川の清流は、年間22億円の経済効果をもたらしている。これは3年前に近畿大有路研究室に試算していただいた自然資本の評価です。ダムで環境悪化すれば年間10億円ずつの損失につながるのです。

釣り人にとっては「ダムのない清流」はブランドであり、ダムができた川はその価値を完全に失います。

釣り人や、食通はすぐにウソを見破ります。本来の清流環境や、松原アユの味を失えば、瀬見、赤倉の旅館は更に衰退し、人口減少、地域消滅に更に拍車をかけることになります。

 国際的な絶滅危惧種のウナギも、国内準絶滅危惧種の県魚 サクラマスも、その減少の最大の原因は、ダムで川を分断した事にありました。

今、熊本では荒瀬ダムを撤去している現状であり、米国では700以上のダムを撤去し、本来の川の力を取り戻し、漁業を再生させている。これが世界の潮流なのです。


 先般「森は海の恋人」運動を京都大学森里海連環学講座の筆頭研究者である田中克(たなかまさる)先生とシンポジウム京都のパネラーとしてご一緒する機会に恵まれましたが、豊かな海を再生するためにも、川と海を分断するダム、防潮堤というコンクリート文明から、森里海の連環を取り戻し自然と共生する文明への転換こそ必要であることを共有しました

 平成28年開催予定の「全国豊かな海づくり大会」は森と川から海へとつなぐ 生命(いのち)のリレー」のテーマでサクラマスがシンボルとなっていますが、最上小国川ダム建設で川を分断し、特にサクラマスの貴重な産卵場所をダムサイトとして破壊することは、この森里海連環の動きと完全に逆行、矛盾していると考えます。

今、岐阜県では、上流にダムのない「清流長良川とアユ」が世界農業遺産の候補地になっています。島根県ではダムのない清流 高津川で「森里海連環 高津川流域ふるさと構想」特区として地域振興が図られています。

 流水型とて、清流環境を破壊する小国川ダム建設と「自然と文明が調和した理想郷」とか「海は森の恋人運動」は完全に矛盾しているし、「ダムをつくってもダムのない清流を目標として、ダムを前提とし川の力を失った上での「最上小国川清流未来振興図」は「本来の清流や川の力を活かす漁業振興」の時代に完全に逆行し、これからの時代に全く未来が描けないと思うのです。

 もう一つ、環境影響の課題とともに排除され続けてきた、もう一点の不都合な真実があります。ダムに拠らない治水は可能だ。ということです。

 現在、知事の裁量権を問う住民訴訟の裁判が行われています。その中で、以前県の河川改修工事で湯温の低下があり賠償がおこなわれた「金山荘事件」について、県提出の資料により温泉湯脈の温度低下と河道改修の時期が完全にずれており、関連性がないことが立証されました。さらに県は「できない」と主張してきた河床掘削などについて、湯脈に影響なく掘削は可能という事が、複数の温泉研究者により立証されています。

以前は住民が木組みでつくり、洪水時には土砂と共に流出していた堰を、県が今つくれば河川構造例違反に成るコンクリート堰にして土砂をせき止め河床が上がっている。この河床が高い状態では内水氾濫は根本解決できず、ダムがもし上流にできても危険であります。

 そして今、赤倉温泉街は、中心部の旅館が倒産して1年半になり、全体的に老朽化しています。流域の旅館主からは、「今でさえも護岸が危険なところがあると以前から訴えてきた。でも全く県は対処しない。本当に安全安心を考えているのか。という声があります。

また他の経営者は、「息子」の代に継がすにも、現在のような規模では維持しきれない。河川改修に絡め規模縮小の改修工事ができるならば、それほどうれしいことはない。と言う声があります。

以前吉村知事は「歴史的な景観を守るために」ダムだと言及していたことがありました。それは違うのです。実態は、これからの時代にふさわしい旅館の改修を必要としているのです。

ダムによらない、河道改修による治水は、赤倉温泉再生の絶好の機会となります。

これによって洪水による被害を防げる流下能力が高まると同時に、内水被害の根本解決ができ、「ダムがない清流」というブランドを守り、老朽化で悩む温泉街を再生できる。

 これが今年5月全国から集った科学者の総意でした。これこそ、今の時代のニーズに応え未来を見据えた価値を創造する公共事業であり、地域再生の千載一遇の機会ではないか。と考えるのです。

故沼沢組合長は「川本来の力を失ったら、漁業振興にならない」とダムに拠らない治水を訴え続けていました。

 人口減少、地域消滅の危機が迫る現在。そして、川を破壊し本来の川の力を失い続けてきた20世紀の反省にたって、生物多様性や森里海連環を地域経営に活かすべきとされる21世紀型の公共事業のあり方として、ダムに拠らないまちづくり治水への政策転換について、断固として私は求め続けていきます。

県民の税を使って、ムダであり、更に言えば地域消滅に拍車をかける公共事業など、絶対に進めてはならないのです。

これは鶴岡で市議会で1999年冒頭から取り組み、2000年住民投票の直接請求署名運動をしたにもかかわらず市民の願いが叶わず、2001年の秋から使えなくなってしまった、食の都・鶴岡を支え続けてきた地下水100%の「おいしい水」水道水の教訓でもあります。

時代の判断を誤り、地域の価値を高めるどころか価値を下げ、住民負担を増やす結果になってしまっている「水」の問題です。

無論、この鶴岡の地下水資源の保全、現在無秩序な取水の秩序化については、3年前の県議会の議員活動の冒頭から、はたらきかけ続けています。