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ダム案件。7月3日知事宛の意見書を提出しました。


今般6月議会で議論した小国川ダム案件。
改めて意見書を提出しました。
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2013年7月3日

山形県知事 吉村美栄子 様

意見書

小国川漁協の同意も得られないままのダム建設の強行を止めてください。
「ダムのない清流・最上小国川」を守り、ダムに依らない治水を叶えることこそ、
「真の漁業振興と流域経済の再生の道」であります。

山形県議会議員
草島進一

7月1日より山形県内のアユ釣りが解禁され、小国川周辺も賑やかになりました。
「ダムのない最上小国川の清流」は、山形県民の宝であります。
 もとより小国川漁協は、地元産の良質な種苗を放流し、全国的な友アユ釣り大会を誘致し、年間3万人もの釣り人が集う川にし、漁獲高1億2千万円(平成24年推計値)と、県内トップを誇る、全国的にも評価されている優秀な漁協です。今年もダイワ、シマノ、等の大手釣り具メーカー等5社が主催する友アユ釣り大会がおこなわれます。

 現在、県は漁協に対して漁業振興や治水の説明をしている旨を強調していますが、小国川漁協(1095人)はダム建設反対を貫いたままであり、ダム建設に対して、一切同意しておりません。財産権である漁業権をもつ漁業が反対している限り、ダム本体の着工は事実上不可能であります。
 しかし、「漁協から同意が得られるよう、努力する」とだけ説明をし、県はダム周辺工事に着手し、強行している状況です。木々が伐採され、取り付け道路などが切り拓かれ、今の時点で既に大規模な自然の破壊、改変がおこなわれています。今まさに、なし崩し的に周辺工事が進められている。これは「対話重視の吉村県政」として全くふさわしくありません。

 先般2040年の人口推計が発表されましたが、最上町舟形町流域人口推計で、2010年の16,011人から2040年には9,389人へと人口が減ると推測されている未来を踏まえ、流域町において如何に持続可能な発展を叶えるかという視点が最も大切と考えます。

東京海洋大名誉教授 水口憲哉先生は、「通常のダムでも穴あきダムでも建設時に河床を掘り返すなどで川は何年にもわたって大きく破壊される。」ダム建設を認めた段階で、小国川沿いで暮らす人々や全国から訪れる釣り人は、現在まで少なくとも115年以上維持されてきた「きれいな水と香りのよい苔で育まれた東北一美味しい松原鮎」という文化を未来永劫失ってしまう。と明治27年発行の資料をひもとき指摘しています。
ダムを建設すれば、「ダムのない清流」という小国川の大きな魅力はなくなります。それは流水型であろうと、そこを訪れる釣り人や観光客の思いは一緒です。環境影響についても、これまで建設された流水型ダムの2例(島根県 益田川ダム、石川県 辰巳ダム)上流には大型のダムがあり、小国川のような清流環境に及ぼす環境影響については全く実例がなく、科学的に「環境影響」の検証が甚だ不十分であります。「最上小国川流域環境保全協議会」で議論されている内容は河川の環境影響のごく一部のみであり、これをもって全体の影響を推し量るには無理があります。
 ダム建設をおこなえば、年3万人の釣り人、美味な「松原アユ」を食べに来る観光客など、この川にしかない魅力を求めて全国から訪れる観光交流人口に悪影響を与えると容易に考えられます。  近畿大学の試算は、小国川の自然資本についてはアユ釣りだけの経済効果だけとっても年21.8億円の経済効果、ダムなどによる環境悪化で年10億円の損失とされておりました。

小国川流域、赤倉温泉の近年の観光客数は、平成5年の20万人から減り続け、最近は6万人台となり、先般中心部の老舗旅館が自己破産し、それを引き継いだ企業も撤退を表明しました。
ダム開発で安全が保たれることによって果たして観光客は増えるのでしょうか?私は、今般のダム建設により、この地域本来の魅力を失ってしまい、更に赤倉温泉や瀨見温泉、そして観光客への悪影響を懸念するものです。
 今、ダム建設の一過性の経済よりも、その地域に根ざして毎年生産できる自然資本に立つ経済こそ、中長期的にみて優先されなければならない時代と考えます。

 さらに今年、県魚サクラマスがレッドデータブックで準絶滅危惧種に指定されました。いくら放流をおこなっても減少の一途をたどっているとの報告があります。これはこれまで行われてきた河川へのダム建設や河川改修が原因していることが、水産学者や山形県水産試験場関係者より指摘されています。小国川は県内 サクラマスやヤマメにとっても産卵床として重要な河川です。小国川ダム建設はサクラマスの絶滅に拍車をかける恐れがあります。サクラマス保護の観点からも小国川のダム開発はやめるべきであります。

また、住民の生命を守る治水の考え方についても、私達は、3.11の際、「想定外」として犠牲者をだした田老町の防潮堤の教訓や、近年の上流に2つもダムがあっても治水が叶わず犠牲をだした2004年の新潟水害、和歌山水害を教訓にするならば、効果が限定的な流水型ダムよりも、河道改修、河川整備で「いつ、どのような規模でおこるかわからない洪水に対して住民の命を守る」というダムに依らない「流域治水対策」に転換すべきと考えます。
今般指摘した「ダムによる受益地域に建設を認めた建築物についてですが、県の姿勢には、地先の安全を可能な限り確保する姿勢や現在滋賀県や兵庫県で進められている「流域治水」の観点の姿勢が全くない事を強く感じました。


これらを踏まえた上、今後の流域地域の生命と財産を守り、山形県の「持続可能な発展」を叶えるためにも、ダム建設については私は断固反対であり、見直しを図るべきと考えます。
 
先ずは、これまで地域に貢献し続けてきた小国川漁協の同意も得ないままのダム建設の強行を止めてください。
 そして、治水方策を「ダム」から赤倉温泉の再生を伴う「流域治水」に転換し全国的に希少価値の高い「ダムのない清流小国川」の特性を活かした地域振興、漁業振興に努めて頂きたく、ご提言申し上げます。

以上。