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JBPRESS に小国川ダム問題が掲載されました。


JAPAN BUSINESS PRESS 日本ビジネスプレス 12/18版に、最上小国川ダム問題の記事。
必読です。高成田享(元朝日新聞論説委員 報道ステーション)


http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/36760


以下、転載します。

先日、山形市で開かれた「知事はなぜ、ダムにこだわるのか!?」と題した集会に参加した。山形県が同県最上町に計画している最上小国川(もがみおぐにがわ)ダムの建設に反対する「最上小国川の清流を守る会」が主催したもので、同県出身の評論家、佐高信さんや、山形大学の地質学者、川辺孝之教授、小国川漁協組合長の沼沢勝善さんらがこのダム計画の無謀さを語った。

 実は、私も登壇したのだが、この問題にはそれほど詳しくないので、「震災とコンクリート文明」と題して、漁業資源よりも漁港作りに力を入れてきた水産行政の失敗が今回の震災で露わになった、という話をした。

 私が小国川ダムの建設計画を知ったのは2004年10月に最上町の赤倉温泉で開かれた「東北自然保護の集い」に参加したときのこと。鮎釣りのメッカである小国川でのダム計画だけに、これが実現すれば鮎の生態に大きな影響を与えると心配する釣り人が多かった。

 その後、「コンクリートから人へ」を掲げる民主党政権ができたので、この計画は白紙になったはずだと思っていたのだが、今回の集会で、白紙どころか、ダム建設を前提にした周辺道路の工事が始まったと聞いて驚いた。

穴あき型ダムでも防げない赤倉温泉の洪水被害


山形県のホームページにある小国川ダムの概念図
 山形県のホームページから、「最上小国川ダムの概要」を探し出すと、小国川が最上川の支流で、山のふもとに建設しようとしていることが分かる。ダムのイラストはもちろん美しく描かれているが、渓流をせき止める人工物の異物感はぬぐい去れない。

 このページを見ながら面白いと思ったのは、「参考資料」として、従来の貯留型ダムと、小国川に計画している穴あき型ダムとの違いが図入りで出ていて、穴あき型は貯留型と違って、土砂の堆積や富栄養化がないと説明されていることだ。穴あき型は洪水発生時だけ川の流れをふさいで貯水し、平常時は貯水を行わない。

まるで従来の貯留型は欠陥ダムで、それと違って穴あき型は素晴らしいというわけだ。

 近年、「脱ダム」の動きが盛り上がったときに、その根拠の1つとなったのがダムは長年使っているうちに土砂が堆積して、ダムとしての機能が低下するということだった。山形県の説明を見れば、まさにそのことが事実として描かれている。

 こういう情報は、県独自で作るのではなく、国交省の「ご指導」の下に作られるはずだから、国交省も従来のダムは、土砂の堆積や富栄養化などの欠陥があることを当たり前のこととして認めていることになる。

 ダムを建設するときには、こうした懸念はあり得ないと説明していたはずだから、日本中の多くのダムが土砂の堆積で機能低下が起きていることは「想定外」ということになるのだろう。それなら、もうダムという発想はやめよう、とならず、穴あき型ダムというコンクリートで解決しようというところが、建設省の血脈が流れる国交省ということなのだろう。

 川辺教授は、穴あき型でも流木などで穴がつまり、貯留型と同じことになると解説していた。東日本大震災の津波に対して、三陸自動車道などが陸地の防潮堤として役立ったのは、自動車道の下を横切る一般道路が流木やがれきでふさがれ、津波が一般道から流れ込むことが少なかったからだ。私の直感でも、穴あき型は、何度か豪雨を経験すれば詰まってしまうし、それを取り除くには大変な労力と費用がかかるだろうと思う。穴あき型の限界は、すでに「想定内」になっているのだ。

 川辺教授によると、小国川沿いに建つ赤倉温泉の旅館は、河床よりも低い位置にあるので、豪雨になれば、山伝いに流れてくる水によって、冠水する可能性があるという。つまり、治水のためにダムを造って川の水を抑えても、山から温泉に流れてきた水を、それよりも水位の高い小国川に流すことはできないので、洪水・冠水の可能性は残るという。ダムが根本的な解決にはならないというのだ。

解決策はダムだけではないはず

 このダム計画は、赤倉温泉が洪水で冠水するのを防ぐのが目的だ。ダムに反対する人たちは、ダムの代わりに、川を深く掘り下げる、堤防を高くする、上流の山々を間伐などで丈夫にして「緑のダム」にする、などの組み合わせを提案している。

県は、洪水時に想定する水量、ダムによって制限する放水量などの数字を示して、穴あきダムがいかに有効であるかを示す一方、代替案では、河床の掘削によって温泉の源泉が枯れるなどの影響が出るおそれがあると説明しているという。

 そのデータや説明にうそはないと思うが、それなら本当かと問えば、与えられた条件の下では本当、という答えが返ってくるだけだろう。

 かつて、長良川の河口堰問題が起きたときに、建設省の役人の説明を受けたことがあるが、私は反対派の人たちが説明していた環境破壊への懸念の方に説得力があると思った。それにしても、そのときの役人たちの熱心さはすさまじく、まるで新興宗教の信者みたいだと感じた。あれから15年、現状は、自然保護団体などによれば、環境破壊が進んでいるというが、国交省は特段の問題が起きていない、という判断のようだ。つまり、地元の漁師たちが環境の悪化を訴えても、国交省はそれも認めないということだ。

 私は、小国川ダムに反対か賛成かという議論は、それだけなら不毛だと思っている。釣り人も渓流釣りを楽しみ、赤倉温泉街も今よりも洪水の被害が少なくなり、多くの人々が訪れるようにするには、どうしたらよいかを考えれば、ダムとは異なる結論が出てくると思うからだ。

 ダムを建設すれば、「ダムのない渓流」という小国川の大きな魅力はなくなる。温泉街も洪水の被害が少なくなるのなら、ダムはない方がいいはずだ。八ッ場ダムのように利水がからむと、ダムそのものの必要性が問われ、上流と下流の人々の間で利害の衝突が起こるが、小国川ダムでは、治水が目的だから、そこで多くが納得するプランができれば、ダムは二の次になる。

 ダムの建設を中止して、赤倉温泉の再活性化プラン作りに切り替えれば、大きな話題になるとともに、全国から渓流を楽しんだり、「脱ダム」の視察に来たり する人々でにぎわうだろう。自然と共生する思想は、もはや時代が共有する考え方で、民主党も自民党も第三極もないはずだ。


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地域振興策の考え方について、今の時代、生物多様性を活かすことが、地域の振興策になるのだということを9月の山形議会の予算審議で正した。

年間22億円の経済効果があると近畿大の有路先生が試算してくださったアユ効果を活かすことが地域振興なのだということ。また、今年7月に、黄金アユを守ろうとして照葉樹林伐採計画に反対したところからはじまった、宮崎県 綾町は、国連MAB計画、ユネスコエコパークとなって、国際的な発信をはじめたこと。また、島根県の高津川流域では、清流日本一とアユの流域を更に磨きをかけようと、国の特区として、森里海連環の振興策を、森林整備、アユのCAS冷凍保存流通、河川の自然再生などに取り組んでいる事などを紹介しながら、実は小国川流域は、森里海連環のユネスコエコパークのモデルとなりうることを提起し、ダムをつくれば、それが全て台無しになることを示して知事に見直しを迫った。

ここで高成田さんが書いて下さった

「ダムの建設を中止して、赤倉温泉の再活性化プラン作りに切り替えれば、大きな話題になるとともに、全国から渓流を楽しんだり、「脱ダム」の視察に来たりする人々でにぎわうだろう。自然と共生する思想は、もはや時代が共有する考え方で、民主党も自民党も第三極もないはずだ。」

こそ、まさに正論であり、今の時代におこなわれるべき、地域振興の姿だと考える。

山形県の今後の発展を考える、経済人の皆様にこそ、ぜひ考えて頂きたいのだ。