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12月21日、県に対して公開質問状を提出しました。


 
本日、議会最終日。終了後、以下、公開質問状を提出いたしました。 


 公開質問状
                              2011年12月21日
山形県知事 吉村美栄子 殿
山形県土整備部長 鹿野正人 殿
       
                    最上小国川の清流を守る会
                      共同代表  川辺孝幸
                      共同代表  高桑順一
                      共同代表  草島進一

私達は、最上小国川、最上川流域の住民の生命と財産を守り、真に持続可能な発展を叶えるためには、全国的に希少価値のある最上小国川の自然環境を守るダムに依らない治水を実現することと考えるものであります。

最上小国川ダム建設について、科学者の方々から以下のような問題の指摘があり、県は回答を避けたままであります。これらは、県の説明会、知事と漁協、自然保護団体との面談、検証の際のパブリックコメント、更に議会質問でも指摘しているにもかかわらず、「聞き置く」だけ、もしくははぐらかしている案件がほとんどです。 更に県が出席を拒んだ11月27日の「県民による再検証」で科学者により指摘された新事実を含むものでもあります。12月県議会でも指摘しましたが、「新事実でもなんでもない」と部長は応えました。とんでもないことです。県民への説明責任を果たすべく、公開質問状に可及的速やかにお応え頂きたく存じます。



■治水対策について 
●理念について
1)2004年の新潟水害など、ダムが想定外の洪水時に機能せず死者を伴う甚大な被害を及ぼした教訓から、対象を越える洪水に対応できないダムによる「定量治水」から、あらゆる大きさの洪水を対象にし、流域全体で受け止め、壊滅的被害を回避する「非定量治水」に舵をきる治水の理念転換が科学者によって唱えられ、滋賀県をはじめ自治体で取り組みが見られます。
 3.11東日本大震災や今年9月の和歌山水害、昨今の広範囲のゲリラ豪雨を教訓とするならば、こうした新たな理念でのダムによらない治水策へ転換すべきと考えますが如何でしょうか。 (今本博健 元京大防災研 所長)


●赤倉温泉地域の堰、床止めなどの河川構造物について
河川課長は12月議会の質疑において「橋脚の保護とか護岸の保護、温泉水の維持などを目的につくったもの」と言及し、「温泉水の維持」を目的と認めているようですが、県がつくった床止め、堰、落差工によって土砂堆積し、結果的に異常に河床があがっている事。それが洪水被害を引き起こす原因となっている事。本来計画河床高に合わせて造るべき床止めとは異なる設置様式になっている事が 河川工学者によって指摘されています。河川管理者自らの河川工事による構造物により、周辺住民を危険にしてきたのではないかという重大な指摘であります。

 山形県作成の縦断図(図1)で、大熊孝新潟大学名誉教授(河川工学)は「36.7kmあたりから37.3kmあたりまで、河床が高くなっている。これは36.7kmあたりの床止めの影響だと思います。この床止めを取れば、河床が平滑化して、洪水位も下がるのではないかと思います。」と指摘しています。
図2でも本来の床止めとは異なり、下流部の堰にあわせ、意図的に高く管理された河床に合わせている事が図から見て取れます。また、洪水被害箇所はこの河床が上昇している地域と一致しています。

図1(山形県土整備部作成)

図2)県の資料を基に国土問題研究会作成 (中川 学 他)
図3県資料 昭和49年の集中豪雨による被害状況

1)県がつくった構造物によって川床が上昇していることは認めますか
論拠と共に回答してください。

2)これまでの洪水被害はほぼ内水氾濫による被害でした。この解消策は河床を下げることであるとの指摘が河川工学者からされております。早期に周辺住民の生命と財産を守る為には、県が造った構造物を除去し、河床の土砂除去、河床掘削をすることが先決ではないですか?

3) 赤倉温泉流域の河床上昇をそのまま放置して、流水型ダムに想定以上(ダムを越流するレベル)の洪水が生じたら、赤倉温泉地域は壊滅的な被害を受ける可能性があると指摘されています。その際、ダム案と改修案では赤倉温泉地域の被害はどちらが大きくなりますか。

4)流水型ダム「穴あきダム」は,ダムの上流で斜面崩壊や土石流が発生した場合,流れてきた樹木や土砂・砂礫によって穴が詰まって,「穴あきダム」の機能を失ってしまい,逆に被害を拡大する可能性をもっていることが,山口県防府市の老人ホームの土石流被害などの同様な形状の場所で明らかになっています.この指摘についての見解を求めます。

■ 2流水型ダム(穴あきダム)の河川環境(鮎)への影響について
(高橋勇夫 たかはし河川生物調査事務所 所長)

高橋勇夫氏の27日の論証は、これまでの県主催の「最上小国川流域環境保全検討会」で検討状況を丁寧に確認をした後に、アユへの影響の問題点について、新たに科学的に論証されたまさに「新事実」であります。(詳細は別紙資料参照)

1)検討されていない「当然検討すべきアユへ及ぼすと予想される影響」

流水型ダムであってもダム下流河川の攪乱強度、攪乱頻度の低下にともなう大型糸状藻類、コケ類、貝類の異常繁殖等、生物相の変化が起きる可能性は十分にあり、深刻な漁業被害が起きる可能性がある。仮に起きた場合、穴あきダムはそれを制御するすべを持たない(貯水ダムで行われているフラッシュ放流のような対策が行えない)。そして、そのことが将来への潜在的なリスクとなる。
攪乱強度、攪乱頻度の低下によるそうした水域の生物相が如何に変化するか、そのことがアユや漁業に影響を及ぼすか全く検討されていない。
●この指摘についての見解を伺います。

2)アユへの影響がすでに検討されているものについて、検討内容が正しいと言えないもの

A) 濁りの影響
 穴あきダムによって発生する濁りの濃度と継続時間は、「ダムなし」と比較して若干の差異が発生(シミュレーションの結果)するが、「アユへの影響は小さい」とされている(第7回資料)。そして、各治水対策を評価する中で穴あきダム案のみが「アユや生態系への影響も小さい」とされている(第8回資料)。
 しかし、最新の知見*では、アユに対する濁りの影響がより詳細に検討されており 、その実験結果から判断すると、穴あきダムによる高濁水(1000mg/L以上、粒径20-55μm)の発生時間の延長がアユに対して大きな影響(死亡)を及ぼすことが十分考えられる。この知見は穴あきダムによる濁水の影響検討が行われた後に出たものであり、検討時点での評価は仕方ないものではあるが今後、新しい知見に基づいて再検討されなければならない。
●再検討が促されているが見解を求めます。

B)土砂移動の影響
 穴あきダムの土砂の移動に関しては、最上小国川流域環境保全協議会では「ダムなしの状況と全体量がほぼ同じに移動すると考えられるが、土砂の移動する継続時間が変化することが予想される」 とされている。
しかし、島根県益田ダム(穴あきダム)では、洪水時に形成される貯水池の流入点付近に大粒径の礫が大量に取り残された状態となっている(現地調査した研究者への聞き取り)。この事実は、「洪水時に運ばれてきた土砂はその全体量が『ダムがない状態』とほぼ同じに移動する」という県の判断のようには移動せず、貯水池でふるいにかけられ、比較的粒径の小さいものが選択的に下流に流される可能性があることを示唆している。その場合、下流河川の環境は変化することになる。
●見解を伺います。

3) 判断が不適切と考えられるもの

「各治水対策案の評価((第8回最上小国川流域環境保全協議会資料)」において、改修工事など各種の治水対策が穴あきダムとともに比較検討されている。その中の「生物多様性の確保及び流域の自然環境全体への影響」に関して、穴あきダム案は「魚類(アユなど)の生育や生態系への影響は小さい」と評価する一方で、河道改修案は「河道内の環境が改変されることから水中の生物への影響が考えられる」と負の評価を受けている。
しかし、穴あきダム案が「影響が小さい」とは必ずしも言えないことは上記の通りであり、他方、「河道改修案」に関しては工法(近自然河川工法、多自然工法)を選択することによって、影響はほとんど出ないようにできることもある。日本の河川行政、河川工学に関わる研究者・技術者は、多自然川づくりや近自然河川工法を導入することで、自然環境に負荷を与えないことに真剣に取り組んでおり、その成果も上がっている。河道改修に対する今回の評価は、このような全国的な動きを無視した形となっていて、不適切と言わざるを得ない。
●見解を伺います。
■3「温泉の湯脈に影響するので河床掘削できない」について
 (川辺孝幸 山形大学教授)

1)県は報告書について「3名の研究者の同意だ」と主張されていますが、そもそも平成21年3月に発表された最終報告書は、3名の研究者が承認されたものなのですか。  中間報告では、「学識経験者から指導を受けて実施し、了承を受けた。」になっていますが、最終報告では、「下記の学識経験者から指導を受けて実施した」と「了承を受けた」が削除されています。いかがでしょうか。

2)県の報告書では、物理探査を含む各種調査結果から河床で湯脈の存在が明確に確認されたのは、阿部旅館と三之丞旅館の間のみで(三之丞旅館下流右岸でそれらしき兆候がある)、それ以外では確認できていません.「温泉の湯脈に影響する」についてですが、県がいう「温泉湯脈の影響」とは、赤倉温泉全域の温泉湯脈のことですか。 それとも左岸の旅館1軒もしくは2軒の温泉への影響ということですか。

3)現在も、報告書にあるように、護岸部分から突き出たパイプから流れ出る40数℃のお湯も、社会的にも認識され法律にも規定されている「温泉」だと、認識されているのでしょうか。

4)阿部旅館1軒のお湯とその水位の確保のみについて、対策を施せば、河床掘削などでの温泉への影響はほぼ回避されるとの川辺教授の論証があります(対策については、掘削した河岸の遮水を含む河川水・温泉混合システムが前回提出した資料に示されています)。これについてはいかがですか。

5)工事中も含め河床をいじれないとする県の立場では、環境・景観整備のための河川改修や、崩壊の危険性があって調査ができなかった右岸の護岸も含め、今後一切河川改修ができないということになりますが、穴あきダムができれば全て解決する問題とお考えなのでしょうか。


以上、可及的速やかなる誠意有る回答を求めます。

ここでお伝えした他にも、科学者同士が議論し、再検証すべき問題があります。これまでも再三にわたり要望しておりますが、県の説明責任を果たす公開討論会の開催を強く求めます。

以上