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鮎に深刻なダメージを与える恐れ「穴あきダムなら環境にやさしい」への反論ー高橋勇夫先生


12月13日の景気雇用対策特別委員会で県土木部は「新事実でもなんでもない」と応えたのですが、
それは全く真実をとらえていません。以下は11月27日の高橋先生のレジュメですが、これだけ見ても、県のこれまでの委員会などをきちんと踏まえ、新事実を突きつけています。「緊急検証! 最上小国川」の模様はhttp://www.ogunigawa.org で usT録画放映しているのですから、当然県は映像も見ているはずです。
 いずれにしても河川管理者としてまた、河川構造を改変し開発をする側の県は、責任をもってこうした県民や研究者の疑問や追求に応え、説明責任を果たして当然です。それができなければ、開発をやめることです。

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穴あきダムによるアユへの影響を考える

たかはし河川生物調査事務所
高橋勇夫

はじめに
 小国川に建設されようとしている穴あきダム(流水型ダム)は、環境への負荷が小さいと評価され、アユや生態系への影響も小さいとされている。しかし、穴あきダムは事例が少なく、アユへの影響を正確に予測することは難しい。さらに、山形県が公開している最上小国川流域環境保全協議会の資料(ホームページ)を見る限り、穴あきダムの影響について当然検討すべきことが検討されていなかったり、検討されているものについても、検討がまだ不十分と考えられる点は少なくない。
ここでは、最上小国川ダム事業に係わる流域環境保全協議会の検討内容の問題点を整理するとともに、穴あきダムによるアユへの影響について検討した。

1. 穴あきダムがアユへ及ぼすと予想される影響
 ダムが建設されることにより発生するアユへの影響は図1(次のページ)のように多岐に及ぶ(他にも水質の変化などの影響因子が存在する)。穴あきダムは水を貯留しないため、ダムに懸濁物質(濁り)や土砂か溜まりにくい。そのため、貯水型ダムで問題となっている濁りの長期化や下流河川の河床材料の粗粒化は起きにくく、貯水型ダムと比べるとアユへの影響はかなり小さくできる(図1の点線で囲んだ部分が軽微になる)と予想される。
 穴あきダムによるアユへの影響を考えるとき、一番問題となるのは洪水のピークカットによる下流河川の攪乱強度、攪乱頻度が低下することである。既存の貯水型ダムの下流では、攪乱強度、攪乱頻度の低下によって、①ツルヨシが水際まで繁茂して砂利河原が失われる、②カワシオグサ等の大型糸状藻類や蘚苔(コケ)類が河床を覆い尽くすように繁茂する(図2左)、③カワニナなどの貝類が異常繁殖する(図2右)、④アユの餌となる付着藻類の質量が変化するといった現象が観察される(以上は図1の点線で囲っていない部分)。そして、このような現象が見られる河川では、アユが正常には生息できなくなることがあり、深刻な漁業被害が起きることもある。
図2 ダム下流河川では攪乱強度・頻度の低下により大型糸状藻類や蘚苔類の繁茂(左)や貝類(カワニナ)の異常繁殖が観察され、深刻な漁業被害が出ることがある



図1 ダムによるアユへの影響と穴あきダムによって軽減される(であろう)影響

2.  流域環境保全検討会で検討されたアユへの影響の問題点

 1) 影響が想定されながらも検討されていないもの
 穴あきダムの目的は洪水のピークカットにあるため、下流河川の攪乱強度、攪乱頻度が低下することは間違いなく、最上小国川流域環境保全協議会においても「ダム下流の攪乱の現象、流況の変化」が起きることが想定されている(第4回資料13p)。しかしながら、協議会においてその影響が検討されたのは主に陸上の動植物へのもので、水域の生物に関しては、付着藻類の生育状態の変化がアユにどのような影響を及ぼすのかが検討されているにすぎない。つまり、先にあげた①~③のような水域の生物相がどのように変化するのか?そして、そのことがアユや漁業にどのような影響を及ぼすのかについては、残念ながらまったく検討されていない。
 ダム下流河川の攪乱強度、攪乱頻度の低下にともなう生物相の変化が確実に起こるとは言えないが、起きる可能性は十分あり、仮に起きた場合、穴あきダムはそれを制御するすべを持たない(貯水ダムで行われているフラッシュ放流のような対策が行えない)。そして、そのことが将来への潜在的なリスクとなる。

 2) 影響検討が不十分と考えられるもの
最上小国川流域環境保全協議会において、アユへの影響がすでに検討されているものについても、検討内容が必ずしも正しいと言えないものがある。

  (1) 濁りの影響
 穴あきダムによって発生する濁りの濃度と継続時間は、「ダムなし」と比較して若干の差異が発生(シミュレーションの結果)するが、「アユへの影響は小さい」とされている(第7回資料)。そして、各治水対策を評価する中で穴あきダム案のみが「アユや生態系への影響も小さい」とされている(第8回資料)。
 しかし、最新の知見*では、アユに対する濁りの影響がより詳細に検討されており、その実験結果から判断すると、穴あきダムによる高濁水(1000mg/L以上、粒径20-55μm)の発生時間の延長がアユに対して大きな影響(死亡)を及ぼすことが十分考えられる。この知見は穴あきダムによる濁水の影響検討が行われた後に出たものであり、検討時点での評価は仕方ないものではあるが、今後新しい知見に基づいて再検討されなければならない。

  (2) 土砂移動の影響
穴あきダムの土砂の移動に関しては、最上小国川流域環境保全協議会では「ダムなしの状況と全体量がほぼ同じに移動すると考えられるが、土砂の移動する継続時間が変化することが予想される」 とされている。
しかし、島根県益田ダム(穴あきダム)では、洪水時に形成される貯水池の流入点付近に大粒径の礫が大量に取り残された状態となっている(現地調査した研究者への聞き取り)。この事実は、「洪水時に運ばれてきた土砂はその全体量が『ダムがない状態』とほぼ同じに移動する」という県の判断のようには移動せず、貯水池でふるいにかけられ、比較的粒径の小さいものが選択的に下流に流される可能性があることを示唆している。その場合、下流河川の環境は変化することになる。

 3) 判断が不適切と考えられるもの
「各治水対策案の評価((第8回最上小国川流域環境保全協議会資料)」において、改修工事など各種の治水対策が穴あきダムとともに比較検討されている。その中の「生物多様性の確保及び流域の自然環境全体への影響」