持続可能な鶴岡ブログ

持続可能な鶴岡ブログ
トップページ > 持続可能な鶴岡ブログ > 山形県議会 草島一般質問 後半

山形県議会 草島一般質問 後半


後半です。ちょっと長いですが、ぜひおつきあいのほどを。

4)最上小国川の見直しについて
5)風力発電について
6)ボランティアの支援について
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

4 最上小国川ダムの見直しについて

2009年の政権交代後、国からの「できるだけダムに頼らない治水の検討」の要請を受けて、県が再検討をおこない、国が8月に認めたということで、いよいよダム建設ができるかとお思いの方もいらっしゃるかと思います。
 しかし、手続きは終わっておりません、この川の漁業権をもつ漁協は、ダムに反対しているのでありますから、熊本の川辺川同様、ダム本体工事は着工できないのであります。議論の余地はまだまだあるし、真実の議論はむしろこれからだ。と考えます。

(1)自然資本の価値と流域経済に対する影響について(県土整備部長)

鮎の漁獲高だけで、年間1億3千万円ある、最上小国川。
先日、舟形町でおこなわれた若鮎まつりは、2日間で2万4千人が訪れ、大変な賑わいでありました。交流人口を育む観光資源として、全国屈指の清流であり、天皇献上品の松原鮎として珍重された天然鮎が遡上する最上小国川は、歴史的な評価・社会的評価・稀少性・固有性・本物性 という、観光に適した5つの要件をどれも備えている優秀な自然資本であるといえます。
この小国川の自然資本の価値をこの夏、近畿大学農学部水産学科 
水産経済学研究室 有路昌彦(ありじまさひこ)准教授らの研究チームにより調査をしていただきました。小国川釣り客が支払っている費用を試算した結果、小国川の釣り客によって発生している経済効果は直接効果だけでも年間約21.8憶円。何らかの理由で河川環境や鮎資源の劣化が生じた場合、年間10億円、10年で100億規模の経済損失が発生することが思料(しりょう)されるとのことであります。
 調査にあたった有路先生は、この全国屈指の清流と鮎は、今後の流域のまちづくりの経済を担う試金石であること。更に、経済学の見地からダム建設投資は新しい価値を生み出さず長期的にみれば流域経済にとってマイナスになる。と言及されました。
 今般の再検証の中で、県は、ダム案による環境破壊が地域経済に及ぼす悪影響について、全く試算に入れていませんでした。これを考慮すれば、ダム案と川道改修案のコスト比較が逆転するのではないでしょうか。

また、県はこれまで、穴あきダムならば環境にやさしい 鮎に影響がほとんどないと強調してきました。
私は最新型の穴あきダムといわれる島根県益田川ダム、石川県金沢の辰巳ダムを視察しています。
 益田川ダムのある益田川は、工場廃液が流れ込む川であり漁業権はありません。また、辰巳ダムがある犀川は上流部に大型の犀川ダムがあり、すでに天然河川の様相はありませんでした。いずれも、ダム建設前後で鮎の遡上量の定量、定性的な調査はおこなわれておらず、益田川ダムの管理者は「穴あきダムは環境にやさしい事を目的に作ったのではなく、効果的に土砂を排出するためにつくられたダムである」と私に話されました。
また、小国川ダムと同様、鮎が豊富な川辺川に建設予定だった穴あきダム「川辺川ダム」については、蒲島熊本県知事が3年前の9月に、「人吉、球磨(くま)地域に生きる人々にとっては、球磨川そのものが、かけがえのない財産であり、守るべき宝なのではないかと思うに至った。」と工事進捗率81%にもかかわらず、ダム建設を白紙撤回しています。熊本県の担当に伺うと、「穴あきダムが鮎や環境に影響がない等」という事は議論にもならなかった。という事であります。穴あきダムでも、ダムはダムなのであります。

ダムのない、年1億3千万円もの鮎漁獲高を持つ天然河川に、穴あきダムが造られたためしはないのであり、小国川がはじめてなのであります。

穴あきダムが全国屈指の天然河川の鮎や環境にに影響をあたえないと主張されるなら、「穴あきダムをつくって10年、20年後でも鮎の環境に影響がなかった」という実証データを示してください。

又、今般お伝えした自然資本の価値とダムによる流域の経済損失についての県土整備部長の見解を伺います。


(2) 治水対策の見直しについて(県土整備部長)

2004年7月の新潟 7.13水害では、上流にダムが2つあり、その一つは穴あきダムある五十嵐川で堤防が決壊し、七千棟以上の床上床下浸水、死者9名の犠牲者を出しました。この9月の豪雨災害があった和歌山県では、3つのダムが満杯で治水の役目を果たしていなかったことが報道されています。和歌山県日高川に「100年に一度の雨に対応する」「つば山ダム」がありますが、氾濫し、家屋59棟が全壊、3人も死亡しています。
 それに対して新潟の五十嵐川では04年水害を教訓に、下流部200戸の移転をともなう河道拡幅をおこないました。今般7月末の豪雨ではそれが幸いし、下流域で犠牲をだすことはありませんでした。

 想定を越える超過洪水の際にはダムは機能せず、それに対して危険箇所の家屋移転と河道拡幅など、ダムに依らない治水が効果的でした。これは最近の実際の現場からの教訓であります。
 傾向として近年広範囲にわたる豪雨が発生している今、治水政策のトレンドは、「どのような洪水であっても人命が失われることを避ける。」ことであります。そのために河道内の流下能力を改善するとともに、田んぼダムのような雨水貯留(うすいちょりゅう)、また、土地利用規制や耐水化建築などの「氾濫原の減災対策」、そして「地域防災力の向上」を組み合わせた「総合治水」の取り組みであります。
 小国川ダム建設の目的は流域住民の生命と財産を守ることですが、その中でもつきだて地域と瀨見地域は、ほぼ50年確立の洪水に耐えられる治水が完了しています。つまりダムは、ほぼ赤倉温泉地域だけの治水対策であります。
 赤倉温泉地域には、河川管理者である県の責任が問われるいくつかの問題があります。まず、旅館群が河道を狭めるように立地させてしまっていること。中には建物が明らかに川に迫り出している旅館があります。更に致命的なのは、県が河道内につくった高さ1.7mの堰堤(えんてい)が、土砂を堆積させ、流下能力の乏しい危険な箇所ができている事です。
 「以前は親子で水泳ができたほど深かった場所が今膝丈ぐらいになっている」との証言が住民からあります。
 県がつくった堰堤が原因で流下能力を下げている、その河川管理の失策を棚にあげ て、今度はその除去はできないと主張して上流に巨額なダムをつくる。これは大きく矛盾していないでしょうか。

 頻繁に洪水災害になっていると県は殊更に強調されていますが、いつも床上、床下浸水で騒がれる箇所約4件は河川洪水の被害ではなく、内水氾濫による内水被害であります。
 又 今、赤倉温泉の川辺に、新しい建物の建築確認許可を県が平気でだして、建設が進んでいます。危険箇所に、また治水策の協議中になぜ新規の建物が建つんでしょうか。治水に「土地利用規制」の発想のない河川管理の問題であります。

県はこれまで、「湯脈に影響するので河床の掘削ができない」と主張し続け、河床掘削案を排除し続けてきました。
 2008年度におこなった温泉調査で県は「川と温泉は密接な関係にあることがわかった」「温泉に影響するから掘削できない」と、調査を途中で打ち切っています。しかし、この調査に実際に関わった山形大学の川辺教授は「あの調査から河床掘削工事が一切できない」という結論にはならない。」と主張しておられます。更に川辺教授は「岩風呂付近の水位を保てば、温泉に対する河川改修の影響は避けられる。」と言及されています。これは、重要な指摘ですが県は温泉調査の真実を曲解し、ダムによらない治水ができない論拠としているのであります。

 更に県は、今般の検証で「河川改修のみのプランだと安全確保に74年かかると試算しました。集落も田んぼも同様に50年確率の堤防などの整備を下流からおこない水を閉じ込めるプランになっていますが、遊水池等を活用した総合治水の観点から観れば全くナンセンスであります。
 ダムにこだわる旧来の治水論で思考停止しているようですが、このような姿勢で、今後の豪雨や洪水時に本当に県民の生命と財産を守れるか、逆に疑問であります。
 現在、熊本県では球磨川方式として、「基本高水」にこだわらず、ダムに依らない治水方策を積み上げ方式で流域に施し、治水安全度をあげる努力をおこなっています。滋賀県も同様に段階的整備をおこなっています。山形県も、熊本や滋賀県の姿勢に習うべきではないでしょうか。
 
 赤倉温泉の現状の流域の旅館群の景観は、歴史的とはいえ、「改修の度に段々と川に迫り出し、結果的に川幅を狭めてしまった」と流域の旅館主から伺っておりますが、旅館が河道内に迫り出し、護岸も老朽化し汚水の垂れ流しを含め、秩序を失った状況にあります。

 次世代にも引き継げる、持続可能な赤倉地域を叶えるためには、内水災害対策、固定堰の可動堰化による砂利除去、河道拡幅や遊水池確保などダムに頼らない総合治水を究極までおこないつつ、温泉街を再生させることが最善ではないでしょうか。
 県は、この機会に「日本一の清流に面した美しい温泉地域へ」、旅館街のリノベーションと組み合わせて治水を完成させる、いわば、まちづくり治水への政策転換を提案しますが、いかがでしょうか。県土整備部長の見解を伺います。


(3)
ダムによらない治水対策の検討について知事におうかがいします。

今般の検証は、「できるだけダムに頼らない治水への政策転換を進める」との意向の下での検証だったと思います。
しかし、県が検証の場とした会議「最上小国川流域の治水と活性化を考える懇談会」には「ダムによらない治水論」を主張できる河川工学者が一人も招聘されませんでした。
更に山形県公共事業評価監視委員会ですが、河川の再評価のはずであるのに、ここには河川工学者の姿がありません。ダムに依らない治水論を主張できる河川工学者への意見聴取もありませんでした。これが県の検証の実態で、ダムにたよらない治水の検証が全くできていないのであります。

新潟県での検証会議は、ダムによらない治水を主張できる河川工学者を座長にして、農業土木、河川工学者、経済学、観光の専門の先生方が、治水方策について徹底して議論をおこなっていました。結果、2つのダムがこの検証会議で中止になりました。これが「ダム検証の真実の姿」なのだと思います。

私は、最上小国川ダムの検討が始まった河川整備計画策定の流域委員会小委員会から傍聴しておりました。よく歴代の部長や地元の首長は「議論は尽くされた」とか「丁寧に丁寧に説明してきた」といわれています。が、私はそれは全く事実に反しているととらえています。

 致命的なのは流域小委員会の中で治水方策を検討する際、議論をリードする河川工学者が、ダム推進論者2名の参加のみで、ダムによらない治水を主張できる河川工学者は皆無のまま、議論が進んだ事であります。


 元京都大学防災研究所の所長であり元淀川水系流域委員会委員長である今本博健 京大名誉教授は、これまで5回ほど現地調査をされ、治水対策は全く検討不足。流域委員会では特に環境面の影響の検討が乏しく、委員の中で特に河川の専門家の見識を問いたい」と厳しく言及されておられます。

川辺川ダム建設計画を白紙撤回した蒲島熊本県知事は、
「国土交通省は、ダム建設上、生じる問題に対しては、熱心に研究、開発を行っているが、ダムによらない治水は、問題点の指摘にとどまり、極限までの努力を行っていない。そのため、住民の理解が得られてこなかったと考える。」 と言及していますが、私は、山形県に同様の姿勢を感じています。

 原発には原子力ムラという構造があって、それが真実の議論を排除し続けてきました。それと同様、ダムの周辺にも同様の構造で、政官業そして、御用学者のセットで、住民や世論を情報操作し、反論を排除し、論調をダム治水に有利なように推し進め、ダムを造り続けてきた構造があるのではないか。と私は考えます。

 先日滋賀県嘉田知事にお会いしましたが、全国の各県、伝統的に国土交通省から出向している部長や幹部の下で常にダムによる治水論で知事周辺を固め、それが、「ダムに頼らない総合治水」の真実の議論を遠ざけてきたのだということをご示唆いただきました。 

 山形県ではいかがでしょうか。

 こうした構造のため総合治水を叶えたい滋賀県では3年かけて土木部長を国土交通省ではない方に変えたそうであります。

長良川河口堰の国民的な反対運動を教訓に、97年改正された改正河川法の趣旨は、環境と住民参加であります。
発想の転換が必要なのであります。

小国川の清流環境が育む流域の釣り客によって発生している経済効果は年間約21.8憶円。全国屈指の清流と鮎は、今後の流域の農商工観連携まちづくりの経済を担う