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政治に、持続可能な社会づくりの判断基準を。


政治に、持続可能な社会づくりの判断基準を。

 100年に一度の経済金融危機から生じる雇用不安をどうするかという大命題を受け、景気浮揚策、雇用対策が発表されている。その動きの中で近年ずっと予算削減の方向で動いてきた公共事業についても、積極的に予算投入のような姿勢が見られる。しかし、ちょっと待って頂きたい。その公共事業が今後の「持続可能な社会」に貢献する事業なのだろうか。
 昨年5月末、スウェーデンで行われた第一回国際エコ自治体会議(スウェーデンエコ自治体会議主催)に参加した。現在スウェーデンの289自治体の内、72自治体がエコ自治体として登録されている。その基準は、「持続可能な社会のための4つのシステム条件からなるフレームワークを判断基準としたマスタープランを市長、議会が承認し、地域経営しているか。ということにある。 
 
 その4つのシステム条件とは1、自然界に地殻から掘り出した物質が増え続けない。2、自然界に人間のつくりだした物質の量が増え続けない。3、自然が物理的な方法で劣化しない。 4、人々が満たそうとする基本的なニーズを妨げるような事をしてはならない。というものである。

 この持続可能な社会に導くフレームワークは1989年にスウェーデン国王も支援し設立された環境NGOナチュラルステップの代表であり、小児ガンの研究者であるカール=ヘンリク=ロベール博士がスウェーデンの多くの科学者たちと開発したものだ。

 こうした科学的な判断基準を指針として、スウェーデンのエコ自治体は、持続可能な社会を目指すマスタープランをつくり、そのゴールとして例えば2020年までに脱化石燃料の都市にする。など明快な目標設定をおこない、その理想像からふりかえる、バックキャスティング手法で、政策を定め、確実に年々、低炭素化、など持続可能といえる社会形成に駒を進めている。

 灯油や電気の暖房を木質ペレット、チップボイラーや、ゴミ処理場での熱利用、また、海水や地下水のヒートポンプに変え、更に地域暖房のインフラをつくる。風力発電や太陽発電所を普及させる。太陽光をふんだんにとりいれ、蓄熱するグリーンビルディングに替えていく。 自動車のガソリンに炭素税をかけ、エタノールカーや電気自動車に誘導する。ほぼ10万人程度の地方都市でも、下水道やゴミから発生するバイオガスで地域全体にお湯を供給する地域暖房のインフラが整備され、公共バスが走っていた。明快な理念と判断基準を掲げ、大胆ともいえる、新しい社会のインフラ整備をおこない、そこで雇用と持続可能な経済を生み出す。こうした自治体の動きが先導してスウェーデンでは、実際、1997年から2007年の10年で、Co2を8.7%削減しながら、経済成長をGDPを44%増やすことを実現している。


 実は、2010年に開催されるバンクーバー冬期五輪の開催地のひとつであるカナダのウィスラー市も、前述のナチュラルステップの持続可能なフレームワークを導入しているエコ自治体であり、主会場の整備やオリンピックで増大する観客や宿泊客の受け入れについてのインフラづくりが、その判断基準に基づいてつくられている。五輪のためにつくられた全ての施設がグリーンビルディングの基準を満たし、周辺環境にインパクトを与えない開発に徹している。
 今、雇用対策として再燃しようとしているわが国や自治体の公共事業に、こうした「判断基準」があるだろうか。日本の場合、1997年から2007年までのこの10年間でCo2排出量は-6%削減するどころか+8.7%上昇している。

 未だに150ものダム建設事業や道路建設は推進される一方だ。結局、生物多様性を基軸とする生態系サービスの恩恵を失い、今や国際的な指針といえる持続可能な社会形成から更にはずれていくのではないか。「地球がなくなったら、どんな経済も成立しない」それを念頭とした明確な持続可能な社会づくりの「判断基準」に基づいた公共事業、真のグリーンニューディールをおこなう政治が今こそ求められていると考える。

山形県鶴岡市議会議員
ナチュラルステップジャパン・ファシリテーター